虫歯が痛いと、日常生活のさまざまな場面で支障が出る可能性があります。実際に、過去にそのような経験をされた人も多いのではないでしょうか。
厚生労働省のデータによると、30歳以上のおよそ9割が虫歯であることがわかっています。一方で、虫歯の程度や痛みなどの症状は人によってさまざまです。(参考:令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要)
なかには、すでに歯に痛みがある人や、違和感を感じている人もいるかもしれません。その場合は、虫歯の進行や症状の悪化を防ぐためにも、適切な対応が重要です。
この記事では、虫歯が痛いときの原因や、緊急時の応急処置について解説します。また、虫歯の進行度の確認方法や、受診のタイミングもご紹介しますので、参考にしてみてください。
- 虫歯が痛む原因と特徴
- 虫歯の進行度のチェック方法
- すぐに歯医者に行けないときの応急処置
虫歯が痛い原因は?特徴と構造を解説

虫歯が痛むのは、虫歯菌が歯の内部にある神経にまで到達してしまったサインでもあります。
虫歯と向き合い、適切に対処していくためには、痛くなる原因や虫歯のメカニズムを理解しておくことが重要です。まずは、歯の構造と虫歯の関係性について確認してみましょう。
| 歯の構造 | 歯層の特徴と痛みの関係 |
| エナメル質 | 歯の最も外側にある丈夫で硬い層。この層には神経が通っていないため、虫歯になっても痛みは感じない。 |
| 象牙質 | エナメル質の内側にある比較的柔らかい層。この層には神経につながる組織があるため、虫歯が進行するとしみるなどの痛みを感じるようになることもある。 |
| 歯髄 | 歯の内部にある神経や血管が詰まった層。一般的に「歯の神経」と呼ばれており、この層に虫歯が到達するとズキズキと激しい痛みを感じるようになる。 |
このように、虫歯の痛みは進行度合いによって、自覚症状や痛みの程度が変化します。虫歯の進行や症状の悪化を防ぐためには、早めの歯科受診が不可欠です。
令和4年の55歳以上のデータを確認すると、一部の年齢階級を除いて虫歯が増加傾向にあることがわかりました。一生を通して自分の歯を残すためにも、定期的な歯科検診を習慣化していきましょう。
虫歯の痛みはどのくらい?進行度をチェック

虫歯の痛みは、進行度合いを示す大切なサインです。これから、虫歯の進行度ごとの特徴や痛みについて解説します。
すでに痛みがある場合は、自身のケースがどの段階に当てはまるかチェックしてみましょう。虫歯の進行度と主な特徴を、以下より詳しく見ていきましょう。
C0|見た目の変化がわかりにくい初期症状
C0は、虫歯のごく初期の状態を指します。歯の表面を守るエナメル質が少しずつ溶け始めていますが、まだ穴は開いていません。神経にも達していないため、この段階では痛みを感じることはほとんどありません。
特徴として、歯の表面に白く濁った部分が見えたり、触るとザラザラすることがあります。これは虫歯の初期サインです。
C0の虫歯は「再石灰化」といって、唾液の力や適切なケアによって自然に回復する可能性があります。そのため、早めに対処することがとても大切です。
この段階であれば歯を削る治療は不要で、フッ素入り歯磨き粉の使用や、歯科でのフッ素塗布が有効です。

C1|冷たい物にしみる・黒い点が見える
C1は、虫歯が歯の表面を覆う「エナメル質」にとどまっている状態です。歯の表面に小さな穴ができたり、茶色や黒っぽい点が現れるのが特徴です。
まだ神経までは進んでいないため、痛みを感じないことがほとんどです。ただし、人によっては冷たい飲み物などがしみる場合もあります。
C1まで進んでしまうと、自然に治ることは難しく、多くの場合は歯科での治療が必要になります。早めに処置を受けることで、治療の規模を小さくでき、歯や体への負担を減らすことができます。
C1の段階では削る範囲がごく浅いため、治療は比較的短時間で済み、痛みも少ないです。
C2|熱い・噛むと痛む
C2は、虫歯がエナメル質を超えて、その下にある「象牙質」にまで進んだ状態です。
象牙質には神経につながる細い管(象牙細管)があるため、刺激に対して反応が出始めることがあります。ただし、この段階では痛みをほとんど感じないことも多く、冷たい物や甘い物を口にしたときに「しみる」「少し気になる」と感じる程度の場合も少なくありません。
治療では、虫歯の部分を大きく削る必要があり、多くの場合は詰め物や被せ物で補う処置が行われます。
C3|何もしなくてもズキズキ・寝れないくらい痛む
C3は、虫歯が歯の中にある「歯髄(神経)」にまで達した状態です。
この段階になると、心臓の鼓動に合わせて「ズキズキ」と強く痛むのが特徴です。特に、就寝時や入浴後など血流が増えるタイミングで痛みが強まることがあります。
治療では、多くの場合「根管治療」と呼ばれる神経を取り除く処置が必要になります。C2までの治療に比べて工程が増えるため、通院回数や治療期間も長くなる傾向があります。
C3は「強い痛みを感じる代表的な段階」であり、放置すると膿が溜まって歯茎や顎に炎症が広がるリスクがあります。
C4|痛みが一時消失し抜歯のリスクが上がる
C4は、虫歯が進行して歯の大部分が崩れ、根だけが残っている状態です。
この段階では歯の神経がすでに死んでしまい、痛みを感じなくなることもあります。しかし、これは「虫歯が治った」わけではなく、細菌がさらに広がっているサインの可能性もあります。
放置すると、根の周囲に膿がたまり、顎の骨や周囲の歯に悪影響を与える危険があります。そのため、多くの場合は抜歯が必要になり、その後はブリッジや入れ歯、インプラントなどで失った歯を補う治療が行われます。
定期検診でC4になる前に対応すれば、多くの歯は残すことができます。
虫歯は、唾液を介して感染することもあります。親から子供にうつるケースが最も多いとされているため、同じ食器類を使わないなどの対策が必要になります。
虫歯が痛いけど歯医者にすぐ行けないときの応急処置

「虫歯が痛くてつらい。でも、今すぐには歯医者に行けない…」そんなときに、痛みを一時的に和らげるための応急処置をご紹介します。
人によって効果は異なるため、以下の内容を参考にして自分に合う方法を探してみましょう。
痛みが強い箇所を冷やす
虫歯によって炎症を起こしている部分を冷やすことで、痛みを和らげる効果が期待できます。
濡れたタオルや、布で包んだ保冷剤などを頬の上から当てて冷やしてみましょう。
口に氷を含んで患部を直接冷やす方法はおすすめしません。
冷やしすぎや過度な刺激は、かえって痛みを悪化させる可能性があります。様子を見ながら、適度に冷却することが大切です。
口の中をゆすぐ・清潔にする
ぬるま湯や塩水などで口内を優しくゆすぐことで、一時的に痛みが和らぐ場合があります。
とくに、虫歯で歯に穴が開いている場合は、そこに食べかすが詰まったままにならないように注意しましょう。
口をゆすぐ際は、アルコール成分を含むマウスウォッシュや冷たい水は避けるようにしてください。刺激によって、痛みが増す可能性があります。
鎮痛剤の使用(ロキソニン・カロナール)
ロキソニンやカロナール、バファリンなどの市販の鎮痛剤は、虫歯による痛みを和らげることにも有効です。
鎮痛剤を使用する際は、用方・用量を守って服用してください。また、市販薬の効き目には個人差があるため、痛みが改善しない場合は他の方法を検討しましょう。
その他、正露丸に含まれる”木クレオソート”にも鎮痛作用があります。正露丸を虫歯の穴に詰めることで、一時的に痛みを緩和できるかもしれません。
痛みに効くツボを押す
虫歯による痛みを和らげる手段として、ツボを押してみるのも一つの方法です。歯痛に効果があるとされるツボには、以下のようなものがあります。
| ツボの名称 | ツボの場所 | 押し方 |
| 合谷(ごうこく) | 手の甲側、親指と人差し指の骨が交わる部分 | もう片方の手の親指を使って、少し強めに5秒ほど押す。2〜3分繰り返す。 |
| 承漿(しょうしょう) | 下唇から少し下、顎の中央にあるくぼみ | 口を閉じた状態で、指の腹を使って3〜5秒ほど強めに押す。5回ほど繰り返す。 |
| 下関(げかん) | 耳の穴から指3本分前で、口を開けると動く部分 | 口を少し開き、人差し指や中指を使ってゆっくりと数回押す。 |
| 頬車(きょうしゃ) | 顎の骨の角から指1本分上の、食いしばると硬くなる部分 | 食いしばった状態から少し脱力し、人差し指でゆっくりと円を描くように押す。 |
| 歯痛点(しつうてん) | 手のひらの中指と薬指の骨の間、付け根の部分 | やや強めにゆっくりと押し込む。左右の手を交互に繰り返す。 |
ツボ押しには、痛みを和らげるほか気持ちを落ち着かせる効果もあります。その場ですぐにできる方法でもあるため、試してみる価値はあるでしょう。
歯がズキズキする理由には、虫歯以外の原因も考えられます。例えば、歯の神経が腐って炎症を起こしているケースや、折れて炎症を起こしているケースなどです。
虫歯の痛みを放置するのは危険!受診のタイミング

虫歯の痛みや症状は、放置すればするほど悪化していきます。痛みが一時的に消えた場合も、虫歯や根本的な原因が解消されたわけではありません。
さらに虫歯を放置した場合、歯やその周辺への影響だけではなく、以下のようなさまざまな疾患につながるリスクもあります。
- 骨髄炎
- 心臓病
- 脳梗塞
- 中耳炎
- 副鼻腔炎
- 肺炎 など
とくに、虫歯の進行を感じたり痛みが強くなったりしたときは、なるべく早めに歯科医院を受診しましょう。
なお、歯科を受診するベストなタイミングは、違和感や虫歯の症状を感じたときです。すぐに治療を開始することが、さまざまな負担を最小限に抑えるための最善策になります。
虫歯の痛み・症状別の治療の流れ

虫歯の痛みや治療内容は、進行度合いによって異なります。歯科受診を検討する際は、事前に治療方針を把握しておくと安心かもしれません。
ここでは、一般的な治療の流れを解説します。
| 虫歯の進行度 | 主な治療内容 | 治療回数の目安 |
| C0 | 虫歯がごく初期の場合は、歯は削らずセルフケアによる自然治癒を促す。 | 定期検診など |
| C1 | 虫歯の部分を少量削り、歯科用プラスチックを詰めて修復する。 | 1〜2回程度 |
| C2 | 広がった虫歯を削り、詰め物や被せ物で補修を行う。治療時、必要に応じて歯型を取る。 | 2〜3回程度 |
| C3 | 虫歯が神経に到達している場合は、根管治療(神経の治療)を行う。歯の内部を洗浄し、薬剤を詰めたあとに被せ物で修復する。 | 3〜5回以上 |
| C4 | 状況によっては抜歯治療が必要になる。その場合は、入れ歯やブリッジ、インプラントなどで補綴(ほてつ)する。 | 複数回 |
虫歯は、進行するほど削る範囲が大きくなり、治療も複雑になります。さまざまな負担が増えるため、気になる症状がある場合は、早めに歯科医師に相談することが重要です。
子供と大人の虫歯の痛みの違い

子供と大人では歯の性質が異なるため、虫歯の進行具合や痛みの感じ方に違いが出る場合があります。主な違いは、以下の通りです。
- 子供の歯:
歯質が薄くて柔らかい虫歯の進行速度が速い傾向人によっては痛みを感じにくい場合がある - 大人の歯:
歯質が厚くて硬い虫歯の進行速度が比較的ゆっくりな傾向虫歯の段階ごとに、しみるような痛みからズキズキとした痛みに変化していく
子供の歯は、エナメル質や象牙質が薄く柔らかいため、虫歯の進行が速い傾向にあります。一方、大人の虫歯は進行が遅く、明らかな兆候が出るまでに時間がかかる場合があります。症状が出てから受診するのではなく、日頃から定期検診に行くことが大切です。
虫歯以外の痛みの原因と症状の違い

歯やその周辺が痛む症状には、虫歯以外の原因が関係している場合があります。なかには、虫歯と間違えやすい症状もあるため確認してみましょう。
| 疾患名 | 主な原因 | 痛みの特徴 |
| 歯周病 | 歯周病菌による歯茎の炎症 | 歯茎からの出血や腫れ・噛んだ際の鈍い痛み・歯のぐらつきなど |
| 知覚過敏 | 歯茎下がりによる象牙質の露出 | 冷たい物が触れた際にキーンと痛む・持続的な痛みはない |
| 歯根膜炎 | 歯の根元周辺の炎症 | 歯が浮いたような感覚・噛み合わせると痛い |
| 智歯周囲炎 | 親知らず周辺の歯茎の炎症 | 親知らず周辺の歯茎が腫れて痛む・口が開きにくくなる場合がある |
| 根尖性歯周炎 | 歯の神経に細菌が侵入して起こる炎症 | 歯の根元の痛みや歯茎の腫れ・ズキズキとした痛みや噛んだ際の痛み・歯茎から膿が出る場合もある |
このように、虫歯以外にも歯の周辺に痛みが出る場合があります。一方で、個人で原因を特定するのは難しいかもしれません。
原因を特定しつつ適切な治療を受けるためにも、気になる症状がある場合は歯科医師に相談しましょう。
虫歯の痛みに関するよくある質問
ここでは、虫歯の痛みに関してよくある質問にお答えしていきます。
歯が痛い・虫歯かもと思ったら早めに歯医者を受診しよう!

この記事では、虫歯が痛いときの原因や進行度ごとの特徴、すぐに歯科医院に行けないときの応急処置などを解説しました。
歯の痛みや違和感は、虫歯の進行度を示す大切なサインです。そして、症状に気づいたときが歯科医院を受診するベストなタイミングになります。
「もしかして虫歯かも?」「痛みの原因がわからない」このような不安を感じる場合は、勇気を出して歯科医院を受診してみましょう。
早めに治療を開始することが、歯や身体への負担を最小限に抑えるための最善策です。
記事監修:あずさ歯科クリニック麹町 院長 児島 梓 先生

2010年に岡山大学歯学部を卒業後、岡山大学予防歯科学講座に所属。その後、大阪の歯科クリニックで分院長を務めるなど臨床経験を積み、埼玉県・東京都内のクリニック勤務を経て、2023年4月に「あずさ歯科クリニック麹町」を開設。
豊富な臨床経験に加え、インビザラインや矯正歯科、インプラント治療、審美・補綴領域に至るまで幅広い研修・専門コースを修了。最新の知識と技術の習得に積極的に取り組み、精密かつ安心できる歯科治療を患者様に提供する。
単に症状を治すだけではなく、生活習慣や根本原因にアプローチし「将来にわたって口腔の健康と美しさを維持できること」を重視した診療姿勢は、多くの患者様から高い信頼を集めている。
経歴
経歴
- 2010年 岡山大学歯学部卒業
- 2011年 岡山大学予防歯科学講座
- 2013~2021年 大阪のクリニック勤務(分院長経験)
- 2021~2022年 埼玉県・東京都内のクリニック勤務
- 2023年4月 あずさ歯科クリニック麹町開設
資格・所属学会
資格・所属学会
- インビザラインコース受講
- 宮島矯正コース受講
- ストローマンインプラントベーシックコース受講
- EXDI6ヶ月コース受講
- SJCDレギュラーコース受講


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