奥歯の歯茎がぶよぶよしていて痛い場合、放置したままにすると症状が悪化する可能性があります。
とはいえ、「仕事が忙しくて平日は通院できない」「土日に空いている歯医者が見つからない」などの理由で、すぐに受診できない人もいるでしょう。
この記事では、奥歯の歯茎が腫れて痛い・ぶよぶよになる原因や、歯科医院での治療内容を解説します。
緊急性を見極めるための3つのポイントや応急処置の方法、予防法もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 奥歯の歯茎が痛い・ぶよぶよになる原因
- すぐに歯科医院に行けないときの対処法
- 歯科医院での治療の流れ
奥歯の歯茎が痛い・ぶよぶよする主な原因と特徴

奥歯の歯茎が痛い、ぶよぶよした状態になっている、膿が出るなどの症状が見られる場合、考えられる主な原因は次の5つです。
それぞれの詳細と特徴を見ていきましょう。
歯周病・歯肉炎
奥歯の歯ぐきが赤く腫れて柔らかくなっている場合、歯周病の可能性があります。歯周病は、歯にたまった細菌のかたまり(歯垢=プラーク)が原因で起こる病気です。
歯周病には進行の段階があり、大きく「歯肉炎」と「歯周炎」に分けられます。
歯肉炎
この段階では、歯ぐきが腫れたり、歯みがきのときに出血したりします。ただし、痛みを感じることはほとんどありません。
歯周炎
歯周炎に進むと、歯ぐきがさらに腫れ、膿が出たり、歯がグラグラしてきたりします。進行すると最終的には歯を抜かなければならないこともあります。
また、WHO(世界保健機関)の報告によると、世界ではおよそ10億人が重度の歯周病にかかっていると推定されています。(*1)それだけ多くの人にとって身近で、注意が必要な病気といえます。
*1 出典:WHO「WHO highlights oral health neglect affecting nearly half of the world’s population」
歯肉出血は年齢が高くなるにつれて、起きる可能性が高まります。厚生労働省の調査では、10~14歳が23.9%で最も低く、80~84歳が50.3%で最も高い傾向にあることが報告されています。
(参照:厚生労働省|令和6年 歯科疾患実態調査結果の概要 P21)
深い虫歯による感染(根尖・周囲膿瘍)
深い虫歯による感染が原因となって、奥歯の歯茎が痛くなるケースも見られます。
虫歯がC4と呼ばれる状態にまで進んでしまうと歯の神経は死に至り、歯根の周りに膿が溜まって歯茎が腫れることがあります。
虫歯の進行度はC1~C4までの4段階で表され、C4は最も進行した状態です。
そして、膿による歯茎の腫れは、噛んだときに持続的な強い痛みを引き起こします。症状がさらに進行した場合は、歯槽骨炎や顎骨炎などになる恐れもあります。
歯槽骨炎:
抜歯した後の穴がうまく治癒しないことで起こる可能性がある炎症性の状態で、一般的に「ドライソケット」とも呼ばれています。
顎骨炎:
顎の骨の内部にある骨髄という部分まで細菌が感染し、炎症が引き起こされる状態を指します。
親知らず周囲炎(智歯周囲炎)
親知らずの生え方に問題がある場合も、歯茎の痛みやぶよぶよした状態は引き起こされます。
親知らずが斜めに生えていたり部分的に埋まっていたりすると、歯茎の周囲に汚れが溜まりやすくなります。その結果、歯茎は炎症を起こしやすくなり、痛みや腫れを伴う親知らず周囲炎(智歯周囲炎)になることがあるのです。
親知らず周囲炎は体調が悪いときや、抵抗力が落ちているときになりやすいといわれています。
智歯周囲炎の症状は、慢性期・急性期の初期・急性期ごとに異なります。慢性期では一般的に自覚症状を感じることは少ないとされていますが、急性期は智歯部に持続的もしくは断続的な痛みを感じ、粘膜の発赤や開口障害になる可能性もあります。
(参照:東北大学保健管理センター|保健のしおり 智歯周囲炎ー腫れると痛い親知らずー P4)
歯根破折・口内炎
歯根破折
歯の根にひびが入ったり割れたりすることをいいます。奥歯の歯ぐきがぶよぶよと腫れるのは、この歯根破折が原因の場合や、口内炎による場合があります。
歯の根にひびが入ったまま放置すると、そのすき間から細菌が入り込み、歯の神経に炎症が起きたり(歯髄炎)、歯の根の先に膿がたまる病気(根尖性歯周炎)につながり、歯ぐきが腫れることがあります。
歯根破折は自然に治ることがなく、抜歯が必要になる場合が多いです。
口内炎
歯ぐきや舌、口の中の粘膜に炎症ができる病気です。白い水ぶくれのように見えることが多く、ストレスや睡眠不足、入れ歯や被せ物が合わないことなどが原因で起こります。
口内炎は1週間ほどで自然に治ることが多いですが、2週間以上改善しないときは、他の病気が隠れている可能性もあるため歯科医院を受診しましょう。
痛みがない場合は腫瘍の可能性も
歯肉がんは、初期段階では強い痛みがありません。そのため、単なる口内炎だと思っていた歯茎のぶよぶよが、実は歯肉がんだったというケースもあります。
そして、上顎よりも下顎に発症するケースが多く、奥歯の周辺に見られます。歯肉がんが進行すると、潰瘍やしこりができて、腫瘍も大きくなって出血もします。
歯肉がんを含む口腔がんは、初期段階では口内炎と区別がつかないこともあるため、中々治らないぶよぶよがある人は、速やかに医療機関を受診しましょう。
歯茎が痛い・ぶよぶよする時のセルフチェック|緊急性の見極め

奥歯の歯茎が痛んだり、ぶよぶよした状態になったりしても、すぐに歯科医院を受診するほどではないかもしれません。ここでは、緊急性を見極めるための3つのポイントをまとめました。
① 痛みの種類と強さ
痛みの種類とその強さは、緊急性を判断する手がかりになります。
虫歯は進行具合によって痛み方が以下のように変わることから、歯科医院を受診すべきかどうかの目安にできます。
| 進行度 | 症状 |
| C1 | 痛みはほとんどない |
| C2 | 冷たい物や甘い物がしみたり痛んだりする |
| C3 | 熱い物がしみたり何もしなくても痛んだりする |
| C4 | 一時的に痛みはなくなるものの、その後強く痛む |
ただし、歯周病の場合はほとんどのケースで痛みがないまま進行するため、気付いたときには重症化していることもあります。
② 膿・腫れ・発熱の有無
膿が溜まっていたり腫れていたりする場合は、症状が進行している可能性が高いため、速やかな対応が必要だと考えられます。
特に、歯茎のぶよぶよ感や膿の排出があるときは、深い虫歯や歯根破折による根尖性歯周炎が疑われます。
発熱を伴う場合は炎症が広がっている恐れもあり、放置するのは危険です。これらの兆候が見られたら、早めに歯科医院を受診しましょう。
③ 噛めない・眠れないなど生活への影響レベル
食事のときに噛めない、痛みで眠れないなど、日常生活へ支障をきたしているなら、歯茎の異常はすでに深刻な段階に入っているとみられます。
奥歯で噛むのが辛くなれば食生活の質は大きく低下します。さらに、慢性的な痛みは睡眠だけでなく、仕事のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
そのため、生活に支障をきたしていると感じたら、すぐに歯科医師に相談し、なるべく早く治療を受けるようにしましょう。
歯医者にすぐに行けない時の応急処置と自宅ケア法

治療が必要な状態だとしても、仕事や家庭の都合ですぐに受診できない人もいるでしょう。
そのような人のために、歯茎の痛みやぶよぶよした状態に対する応急処置の方法をご紹介します。
患部を適度に冷やす
冷やすと楽になる場合は、ハンカチやタオルを冷たい水で濡らし、絞ってから頬に当てましょう。
このとき、発熱時や熱中症対策などで使われる、冷却シートを活用するのも一つの方法です。
血流が悪くなって、体の異常をもとに戻すシステムの「免疫反応」を妨げてしまう恐れがあるため、長時間冷やし過ぎないようにしましょう。
市販の痛み止めを使用する
歯茎の痛みが我慢できないときは、市販の鎮痛剤を服用しましょう。ロキソニンやボルタレンといった鎮痛剤には、痛みを弱くする作用があります。
鎮痛剤は、もう少し痛みを抑えたいとの思いから、飲みすぎてしまう人もいますが、量が増えると副作用が出るリスクも増えてしまいます。そのため、必ず用法・用量を守って飲むようにしてください。
うがい・口腔ケア・正しいブラッシング
奥歯の歯茎の痛みは、虫歯や口内炎などが原因となって引き起こされる場合もあるため、うがいや歯磨きなどのセルフケアの方法を見直して、口の中を清潔に保つことも大切です。
殺菌効果のあるうがい薬やデンタルフロス、歯間ブラシなどの口腔ケアグッズは、口の中を清潔に保つのに役立ちます。
また、歯磨きをするときは、以下の3つポイントを意識しましょう。
- 歯ブラシの毛先を歯の面にきちんと当てる
- 毛先が広がらない程度の軽い力で磨く
- 5~10mm程度の幅で小刻みに動かして磨く
痛みをひどくしないためにも、こうした口腔ケアは毎日欠かさず行うことが大切です。
禁煙・睡眠など生活全体の改善
タバコは歯茎の血流量を減少させるため、歯周病に気付きにくくなったり、炎症や痛みの治りを悪くしたりします。お酒も血行が良くなることで炎症を悪化させ、痛みを強くする恐れがあります。
睡眠不足は口内炎の原因となることから、生活リズムを見直すことも大切です。生活全体の改善は予防にも役立つので、ぜひ取り組んでみてください。
歯科医院での治療内容と流れ

奥歯の歯茎の痛みや、ぶよぶよをきちんと治すためには、歯科医院で治療を受けなければなりません。
しかし、原因ごとに必要な治療は異なります。
ここでは、歯科医院での治療内容と流れを原因ごとにお伝えします。
歯周病・歯肉炎|スケーリングやTBI指導
歯周病治療では、原因となる歯垢や歯石を取り除く必要があるため、まずはスケーリングやルートプレーニング、TBI指導(歯みがき指導)が行われます。
スケーリング:
主に歯周病の予防や治療を目的として、歯の表面に付着した歯垢や歯石を取り除く処置のことを指します。
ルートプレーニング:
歯周病が進行した場合に行われることがある専門的な処置で、歯茎の内部深くにある歯の根(ルート)の表面に付着した歯石や汚染された歯の組織を取り除くことを指します。
TBI指導(歯みがき指導):
歯科医院で歯科医師や歯科衛生士が、患者さん一人ひとりのお口の状態に合わせて行う歯磨きの個別指導のことを指します。
一方で、上記のような基本的な歯周病治療で改善が見られない場合は、外科治療が検討されます。
深い虫歯|根管治療
虫歯が歯の神経にまで進行している場合、歯の神経を取り除き、消毒後その部分に詰めものをする根管治療が必要になります。
ただし、虫歯が進行して歯の根しか残っていない場合は、根管治療ではなく抜歯が必要になることもあります。
なお、根管治療は麻酔をして行うため、基本的に痛みを感じることはありません。

親知らず|切開排膿・抗生剤・抜歯
親知らず周辺の歯茎の腫れが軽度であれば、洗浄して抗生剤を飲むことで改善を目指します。
膿の量が多く腫れがひどいケースでは、歯茎を切開して排膿処置が行われることもあります。
親知らずの生え方に問題があったり、何度も炎症を起こしたりしている場合は、抜歯するのが一般的です。
歯根破折・腫瘍|抜歯や生体検査
歯根破折の治療では、ひびが小さければ細菌感染している部分を取り除き、そこに樹脂を流し込みます。
ひびが大きかったり完全に割れたりしている場合は、一度抜歯し、接着してからもとに戻す治療を行います。
しかし、感染がかなり進行しているケースではどちらの治療も行えず、抜歯が検討されることもあるでしょう。
抜歯が必要になったときは、失った歯を補うために入れ歯やブリッジ、インプラントといった治療も必要になります。
また、奥歯の歯茎のぶよぶよが腫瘍かもしれない場合は生体検査などが必要になるため、口腔外科のある病院が紹介されます。歯周病治療については、以下の記事もぜひご参考ください。

歯茎が痛い・ぶよぶにならないための予防法

奥歯の歯茎の痛みや、ぶよぶよ感を繰り返さないためには、正しいケアと生活習慣の見直しが不可欠です。
以下の予防法を習慣化して、再発リスクを減らしましょう。
- 正しい歯磨きのやり方を身に付ける
- フロスや歯間ブラシ、洗口液を活用する
- 定期的に歯科検診や歯のクリーニングを受ける
- タバコや飲酒を控える
- ストレス解消と十分な睡眠を心掛ける
歯茎がぶよぶよになる原因の一つである歯周病は、心筋梗塞や脳梗塞などの全身疾患と関係していることが明らかになっています。
歯周病を早期発見するためにも、定期的に歯科検診を受けることは特に重要です。
歯茎が痛い・ぶよぶよの症状に関するよくある質問
奥歯の歯茎が痛い・ぶよぶよの状態の人が疑問に感じやすいことを、Q&A形式で3つご紹介します。
奥歯や虫歯の歯茎が痛い・ぶよぶよを放置するのは危険!歯科医院にまずは相談を

奥歯の歯茎がぶよぶよして痛い場合、歯周病や深い虫歯による感染、親知らず周囲炎(智歯周囲炎)、歯根破折、口内炎などが主な原因として考えられます。
これらのうち、口内炎以外は歯科治療が必須で、放置したままでは治りません。
また、単なる口内炎だと思っていたものが、実は歯肉がんだったというケースもあるため、歯茎の痛みやぶよぶよは歯科医院に相談すべきサインです。
気付いたら歯茎がぶよぶよで痛いという人は、まずは近くの歯科医院を受診してみてください。


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