「最近、食事のときに噛むと顎が痛い……」「口を開けたときにカクカク音がするけど何でだろう?」と悩む人も少なくありません。
このような悩みを抱えている人は、顎関節症が疑われます。顎関節症になると、日常生活に支障をきたすこともあるため、早期の対応が欠かせません。
この記事では、顎関節症の詳細や顎が痛いときの応急処置・予防方法、顎が痛いときの顎関節症以外の原因について解説します。
歯科や口腔外科を受診すべきタイミングや治療内容もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
- 顎関節症のパターンや特徴
- 痛みが出たときの対処法
- 治療を受けたほうがいい目安
噛むと顎が痛い原因は顎関節症が多い

食べ物を噛むときに顎が痛むときは、顎の関節やその周辺が痛んだり、動かしにくくなったりする「顎関節症」の可能性があります。
顎関節症の場合は、口を開けたときにカクカクと音がする、顎がだるく感じるといった症状が出ることもあります。
顎関節症の原因は一つではなく、精神的なストレスや歯ぎしり、頬杖などの癖、噛み合わせの悪さなど、さまざまなことが関係して引き起こされるといわれています。
顎関節症は珍しい病気ではないため、過度な心配は必要ないものの、噛むと顎が痛い、話しづらいなど日常生活に影響が出ている場合は、歯科クリニックを受診することが大切です。
顎関節症は、虫歯や歯周病に並ぶ「第三の歯科疾患」です。発症メカニズムは不明なことが多いものの、日常生活を取り巻く環境・行動・時間や、本人の性質が原因になるとされています。
(参照:一般社団法人日本顎関節学会編|顎関節治療の指針2020 P8~P9)
スマホ首で顎関節症が増えている

顎関節症はさまざまな要素が絡み合って引き起こされるとお伝えしましたが、最近はスマホの長時間使用が一つの原因になっているといわれています。
長時間スマホを見続けると、自然と頭が前に突き出る「猫背」の姿勢になりがちです。猫背だと顎が正常な位置からずれ、顎関節に負担がかかり、顎関節症のリスクを高めます。
なお、職場でのスマホやパソコンなどのVDT(視覚表示端末)による作業時間は、顎関節症の発症に影響を与える(*1)との報告もあります。
スマホを使用する際は長くても30分程度で一度休憩を挟み、ストレッチなどをして姿勢や顎への負担を減らすよう心掛けましょう。
顎の痛みのパターン・症状別から見える分類と特徴

「顎が痛い」といっても、痛み方は人それぞれです。
ここでは、痛みのパターンごとに、どのようなことが関係しているかをご紹介します。
食べ物を噛むと顎が痛い(咀嚼時)
食べ物を噛んだときに痛みや違和感がある場合、考えられる原因として顎関節症や根尖性歯周炎(歯の根に膿がたまっている病気)があります。
顎関節症
顎の関節に問題があると、あごの動きを助けるクッションのような部分がずれてしまい、口を開け閉めするときにスムーズに動かなくなることがあります。
根尖性歯周炎
虫歯を長く放置すると歯の神経が死んでしまい、その結果、歯の根の先に膿がたまって炎症が起こることがあります。この病気になると、噛んだときに強い痛みが出たり、歯が黒ずんできたり、歯ぐきが腫れるといった症状が見られます。
口を開けると痛い・開きにくい・カクカクする
口を開けるときに顎が痛む、開きにくく感じる、カクカクと音がする場合は、顎関節症になっている恐れがあります。
いずれも顎関節症の代表的な症状で、上記の「食べ物を噛むと顎が痛い」場合と同様に、あごの動きを助けるクッションのような部分がずれることが原因です。
ただし、カクカクやガリガリといった雑音がするケースでは、痛みを伴うとき以外は治療の必要はないとされています。
片側のみ痛い・突然痛む場合
痛みが片側に集中していたり、突然痛んだりする場合は、歯根嚢胞(しこんのうほう)や歯ぎしりが疑われます。
歯根嚢胞
虫歯の進行などによって歯の神経が死んでしまった歯の根の先にできる、液体や膿などが溜まった袋状の病変を指します。多くの場合、自覚症状がないままゆっくりと大きくなるため歯科医院でのレントゲン撮影で偶然見つかることがあり、周囲の骨を溶かしながら拡大していく性質があります。
初期段階では無症状のことが多いものの、進行するとズキズキと痛むため、ひどくなってきたと感じたときは早めに歯科医師に相談しましょう。
歯ぎしり
一方で、寝ているときに歯ぎしりをしている場合は、自分では気付けません。
しかし、起床時に顎が痛い、冷たいものがしみるなどの症状に当てはまる人は、歯ぎしりをしている可能性があります。他にも以下のようなサインが見られます。
- 歯がすり減って平らになっている
- 歯に小さなヒビが入っている
- 歯ぐきが下がってきている
- 肩こりや頭痛が続く
噛むと顎が痛いだけじゃない!顎関節症の副症状

顎関節症は顎だけでなく、全身のさまざまな箇所に症状が出ることがあります。
具体的には、次のような症状です。該当するものが何個含まれるか、一度チェックしてみましょう。
- 頭・首・肩・背中・腰など広範囲にわたる痛みやこり
- めまい
- 耳鳴り
- 耳の閉塞感・聞こえづらさ
- 目の疲れ・充血
- 涙が出やすくなる
- 鼻が詰まっているように感じる
- 顎のぐらつきや噛み合わせの不調
- 歯や舌の痛み
- 味覚の異常
- 口の渇き飲み込みづらさ
- 息苦しさ
- 手足のしびれ
これらの症状があるからといって必ず顎関節症とは限りませんが、当てはまる場合は早めに医療機関を受診しましょう。
噛み合わせのよし悪しは、全身に影響します。下顎は頭から筋肉やじん帯で支えられています。噛み合わせがよくない場合、重たい頭を支えている肩や首に負荷がかかり、全身のバランスが崩れてしまう恐れがあります。
噛むと顎が痛みやすい・顎関節症になりやすい人

噛んだときに顎に痛みが生じやすい人や、顎関節症になりやすい人には以下のような共通した特徴があります。
- 強いストレスを感じている
- 歯ぎしりをしている
- 集中や緊張したときに強く食いしばる癖で唇や頬の内側を噛むことがある
- 頬杖やうつ伏せ寝、猫背などの悪い姿勢をしている
- 噛み合わせがよくない
- 大きく口を開ける・硬いものを噛むなどして顎を酷使している
- 片方の歯だけで噛んでいる
- うつ症状や不安がある
- ストレスで夜眠れないことがある
複数の要素が重なることで顎関節症は引き起こされやすくなるため、これらは改善に努めることが重要です。
噛むと顎が痛いときの応急処置・予防方法

噛んだときに顎に痛みが生じても、仕事や家庭の都合ですぐに歯科クリニックを受診できないこともあるでしょう。
ここでは、症状をひどくしないための応急処置のやり方と、予防方法を紹介します。
患部を冷やす
急に痛みが出たときや、口をほとんど開けられないときは患部を冷やしましょう。
氷水を入れたビニール袋や、氷嚢・ゴールドパックを薄いタオルで包んだものを、10~15分間患部に当ててください。
柔らかい食事を摂る・硬いものを食べない
顎関節症による痛みは、顎の酷使が原因で悪化する恐れもあるため、食事内容に注意することが大切です。
強く噛まなければならない食品は避け、柔らかい食事を摂ることを心掛けましょう。
- おかゆ
- そば
- うどん
- パスタ
- フランスパン
- ビーフジャーキー
- するめ
- ガム
正しい姿勢で生活をする
猫背や頬杖をつくといった悪い姿勢は、顎に負担をかけてしまい、顎関節症になるリスクを高めるため、正しい姿勢を意識して生活することも重要です。
スマホやパソコンを使用するときは、視線が下がって猫背になりやすいため、特に注意が必要です。
スマホを見るときは端末を持つ側の肘を反対の手で支えたり、パソコンを使うときは台を置いて画面の位置を高くしたりすると、猫背を防ぎやすくなります。
枕の高さや寝るときの姿勢を調整する
噛むと顎が痛いときは、毎日の寝方に気を配ることも大切です。
顎に力が入りやすい横向きは避け、枕は低いものを使用するようにしましょう。高い枕は噛み締めやすくなる恐れがあります。
歯並びの乱れにつながる、うつ伏せ寝も控えるようにしてください。歯並びの悪さは、顎関節症を引き起こす原因になります。
顎関節症以外の顎が痛いときの原因

噛むと顎が痛い場合の原因は、顎関節症だけとは限りません。
ここでは、顎が痛いときに考えられる顎関節症以外の原因についてお伝えします。
虫歯や歯周病の歯が痛い
虫歯が歯の神経にまで到達してしまうと激しい痛みを伴い、その影響で顎が痛いと感じることがあります。
また、虫歯は唾液腺炎(化膿性唾液腺炎)につながることもあり、これにより顎に痛みが生じるケースも見られます。
唾液腺炎:
唾液を作り出す耳下腺や顎下腺などの唾液腺に、ウイルスや細菌の感染などによって炎症が起きる状態を指します。
急性の場合は、顎の下にある顎下腺を含む唾液腺に痛みや腫れが生じるほか、唾液が出る管(導管)の開口部から膿も出ます。
親知らずが痛い
親知らず周辺の歯茎が炎症を起こすことで、顎が痛いと感じることもあります。
親知らずは、部分的に歯茎を被ったままだと不衛生な状態になりやすく、結果として炎症が起こり、痛みや腫れにつながることがあります。
これは智歯周囲炎と呼ばれる病気で、炎症が顎の骨にまで広がることもあり、噛んだときに痛みが生じるなどのトラブルに見舞われやすくなります。
ストレス
ストレスが原因で無意識に歯ぎしりをしてしまうと、あごの関節や筋肉に強い負担がかかり、痛みを感じることがあります。
歯ぎしりは顎の痛みだけでなく、歯がすり減る、歯ぐきの病気(歯周病)が悪化する、頭痛が起こるといったトラブルを招くこともあります。
特に寝ている間の歯ぎしりは自分では気づきにくいですが、朝起きたときに顎が痛い、だるい、疲れが残っているといった症状がある場合は、歯ぎしりが原因かもしれません。
さらに、歯ぎしりを放置すると歯が欠けたり知覚過敏になったりするリスクもあります。
予防や改善には、歯科医院で作るマウスピース(ナイトガード)の使用や、ストレスを減らす生活習慣の見直しが効果的です。

ウイルスやおたふく風邪
ウイルス性唾液腺炎と呼ばれるものもあり、代表的なものに流行性耳下腺炎(おたふく風邪)があります。
すでに感染している患者のせきやくしゃみを吸い込んだり、ウイルスが付着した手で口や鼻を触ったりすることで引き起こされます。
顎の下にある顎下腺を含む唾液腺に痛みや腫れが生じるため、顎が痛いと感じる場合があるでしょう。さらに、場合によっては発熱を伴う可能性もあります。
顎が痛いときの歯科・口腔外科での診断と治療目安

顎に痛みはあっても、どの程度で歯科や口腔外科を受診すべきか、わからない人もいるでしょう。
ここでは、受診すべきタイミングと、クリニックでの治療内容をまとめました。
受診すべきタイミング
様子を見ているうちに、痛みが強くなったり症状がひどくなったりした場合は、受診したほうがよいと考えられます。
また、思ったように口を開けられない場合も、受診が必要な状態といえます。
口の開き具合を判断する目安は、人差し指、中指、薬指の3本が入るかどうかです。指が1~2本しか入らなければ、受診したほうがよいでしょう。
なお、口を開けたときに音がするだけの状態なら、受診は不要な状態だと考えられるため、この記事で紹介している予防方法を続けてみてください。
クリニックでの治療内容・治し方
主に、ナイトガードの使用やスプリント療法が検討されます。
ナイトガードは、就寝中の歯ぎしりによって顎にかかる過度な負担を抑えるために使用されます。
スプリント療法:
主にあごの関節や筋肉の痛みなどを伴う顎関節症や、歯ぎしり・食いしばりといった症状の緩和を目的として、スプリントと呼ばれるマウスピース状の装置を歯に装着する治療法の一つです。
このほか、痛みが強くて我慢できないときは、イブプロフェンなどの鎮痛剤が処方されることもあります。
スプリントを使う場合、上顎もしくは下顎に入れ、上下の噛み合わせが均等に接するように装着します。これにより、顎が正常な位置に戻り、筋肉にかかっていた負荷が取り除かれるため、顎がスムーズに動くようになります。
(参照:公益社団法人日本口腔外科学会|あごの関節の音がする/口が開かなくなった/あごが痛い)
噛むと顎が痛いときに寄せられるよくある質問
ここでは、噛んだときの顎の痛みについてよくある質問をまとめました。
顎が痛むときは食いしばりに注意!不安なときは歯科クリニックに相談しよう

食べ物を噛むと顎が痛い、口を開けにくいといった症状が見られる人は、顎関節症になっている恐れがあります。
顎関節症は珍しい病気ではありませんが、日常生活に不便を感じるようなら治療が必要な状態かもしれません。
痛みを感じ続けることはストレスにもなるので、気軽に歯科医師に相談してみてください。


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