インプラント治療では、痛みを感じるタイミングがあります。多くの場合、手術中は麻酔が効いているため強い痛みはありませんが、術後しばらくは一時的な痛みを伴うケースがあります。また、治療から年月が経過した後にも、さまざまな原因で痛みが発生するケースも少なくありません。
この記事では、インプラント治療における痛みが出る主なタイミングや原因、痛みを抑えるための対処法についてわかりやすく紹介します。
- インプラント治療で痛みが出るタイミング
- インプラント治療で痛む原因
- 痛みが出たときの対処法
インプラント治療で痛みを感じる可能性があるタイミングとは

インプラント治療で痛みを感じやすいのは、手術中、手術直後、そして数年後の3つの場面です。
それぞれの時期によって痛みの種類や原因は異なります。以下の表は、時期ごとの痛みについてまとめたものです。
| タイミング | 痛みの有無・特徴 | 主な原因 | 痛みに関する期間の目安 |
| 手術中 | 麻酔のため痛みは気にならないことが多い | 外科的処置 | 術後2〜3時間程度までは、麻酔により痛みは気にならないことが多い |
| 手術直後 | 腫れやズキズキとした痛み | 外科的処置(麻酔切れ後の炎症反応) | 術後2〜3時間後(麻酔が切れる頃)から数日〜1週間程度 |
| 数年後 | 違和感・噛むと痛い | 周囲炎・噛み合わせなど | 原因により異なるが、半年以上の長期に及ぶケースもある |
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
手術中
一般的にインプラントの手術中は局所麻酔が効いているため、強い痛みを感じにくいケースが多いとされています。
押される感覚や振動を感じるケースはありますが、鋭い痛みを伴うことは少ないでしょう。ただ、手術そのものの痛みは感じにくいですが、麻酔をするための注射の痛みはあります。
治療に強い不安を持つ方には、静脈内鎮静法などを併用し、リラックスした状態で受ける方法が選択可能なこともあります。
手術直後
インプラントは外科的な手術を伴うため、術後に痛みや腫れが出るのは自然な反応です。
麻酔が切れる術後2~3時間後から翌日にかけて鈍い痛みや腫れを感じやすく、腫れのピークは手術後2〜3日目です。その後は徐々に落ち着き、一般的には1週間ほどで改善します。これらの症状は、身体が炎症を起こして傷を修復しようとする過程の一部です。
処方された鎮痛薬を正しく服用すれば、多くの場合、痛みは軽減できます。
ただし、強い痛みが続く、腫れが引かない、発熱や膿が見られるといった症状がある場合は、感染などの合併症の可能性もあるため、早めの受診が必要です。特に骨造成を行った場合や複数本のインプラントを同時に入れた場合は、腫れや痛みが強く出ることがあります。
数年後
インプラント治療は多くの場合、長期間にわたり機能を維持できますが、数年経ってから痛みを感じることもあります。
こうした症状は術後すぐの炎症とは異なり、治療後の経過や口腔内環境の変化によって起こるものです。詳細は後述しますが、代表的な原因としてインプラント周囲炎や噛み合わせの変化、部品の緩みなどが挙げられます。
インプラント治療中は麻酔が効いているため痛みを感じにくいですが、術後は炎症反応による腫れや痛みが数日間続くことがあります。また、インプラント周囲炎や噛み合わせの変化などによって数年後に痛みが出るケースもあります。
インプラント手術後の痛みはなぜ起こる?

インプラント手術後に感じる痛みの多くは、身体が傷を修復しようとする自然な反応によるものです。外科的処置に伴う炎症や、骨を増やすための追加手術、さらにはインプラントの埋入本数が多いことなどが関係します。
いずれも一時的な症状として現れることが多いものの、症状の強さや回復までの期間には個人差があります。
ここからは、術後の痛みに影響する主な要因を順に見ていきましょう。
外科手術によるもの
インプラント治療は歯ぐきを切開し、顎の骨に穴を開けて人工歯根(インプラント体)を埋め込む口腔外科手術です。切開や骨の加工により周囲の組織が刺激を受けるため、痛みや腫れが生じます。
これは自然な炎症反応であり、腫れや痛みは術後2〜3日がピークで、1週間ほどで落ち着くのが一般的です。手術直後は血流が増して腫れが強くなることもありますが、処方された鎮痛薬の服用や安静を守ることで症状がやわらぐケースが一般的です。
症状がひどくならないためにできるセルフケアのポイントは以下のとおりです。
- 手術当日は安静に過ごす
- 患部を冷やすと腫れの軽減に役立つ
- 熱い食べ物や刺激物を避ける
骨の造成手術をした
顎の骨が少ない場合には、骨を補うサイナスリフトやGBRなどの骨造成手術を併用することがあります。この場合、通常のインプラント埋入に比べて処置の範囲が広がるため、痛みや腫れがやや強く出る傾向が見られます。
サイナスリフト:
上の奥歯部分の骨の高さが不足している場合に、歯科インプラント治療を可能にすることなどを目的として行われることがある骨を増やすための手術の一つです。
GBR:
骨誘導再生法とも呼ばれ、歯周病や抜歯などによって失われた顎の骨を再生させるための治療法の一つで、主にインプラント治療に必要な骨の量を確保する目的で行われることがあります。
特に上顎洞付近を扱うサイナスリフトでは、鼻や頬にかけて腫れや違和感を覚えるケースも少なくありません。ただし、多くは時間の経過とともに治まるもので、鎮痛薬の服用や安静によって対応が可能です。
インプラントの本数が多い
インプラントを複数本埋入する場合、切開範囲や骨への加工量が増えるため、術後の痛みや腫れが強めに出ることがあります。
1本だけの埋入では数日で落ち着く痛みも、複数本になると回復までにやや時間がかかることもあるでしょう。これは侵襲の大きさに比例する自然な反応であり、適切なケアを行うことで、症状がやわらいでいくケースが多いとされています。
術後の痛みは、外科的処置に骨造成を伴った場合、埋入本数が多い場合に強まる傾向があります。
インプラント治療から数年後に痛みが出るケース

インプラント手術直後の痛みは通常一時的な炎症反応によるものですが、数年後に痛みが生じるケースもあり、この場合は別の原因に起因します。
ここでは、代表的なケースを紹介します。
インプラント周囲炎
インプラントの周りに細菌がたまると、歯ぐきに炎症が起きることがあります。これを放っておくと、インプラントを支えているあごの骨(歯槽骨)が少しずつ溶けて減ってしまい、インプラントが不安定になる病気が「インプラント周囲炎」です。
初期の症状には、歯ぐきの腫れや出血、噛んだときの違和感などがあります。さらに進行すると、痛みが出たり、インプラントがぐらついて最悪の場合は抜け落ちてしまうこともあります。
噛み合わせの変化
インプラント手術から年月が経つと、歯や顎の動きに変化が生じ、噛み合わせがずれることがあります。インプラントは天然の歯のようにわずかに沈み込むクッション機能がないため、過度な力が集中すると違和感や痛みが出やすいのです。
特に歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は注意が必要で、マウスピースの使用や定期的な咬合調整が対策のひとつとされています。
ひび・割れなどインプラントの破損
噛みしめや歯ぎしりなどによって過剰な力が繰り返し加わると、ひびや割れなどのインプラントの破損が起こり、痛みが生じるケースもあります。
状況によってはインプラントの修理や再製作が必要になることも少なくありません。
トラブルの多くは力のかかり方と関係しているため、噛み合わせの調整やナイトガードの使用が予防に役立つことがあります。

周囲の歯の虫歯
インプラントそのものは人工物であるため、虫歯にはなりません。しかし隣にある天然の歯は従来通り虫歯のリスクがあります。
特にインプラントと歯の間は歯ブラシが届きにくく、汚れが残ると虫歯が進みやすい場所といえます。隣の歯の虫歯が進行して痛みを感じることもあるため、違和感を覚えたときには歯科医院で原因を正しく見極めてもらうことが大切です。
アバットメントの緩み
インプラント体と人工歯をつなぐ部品であるアバットメントが緩むと、噛んだときに違和感や軽い痛みを感じることがあります。
アバットメント:
主に歯科インプラント治療で用いられる部品の一つで、顎の骨に埋め込まれたインプラント本体と、外側に見える人工の歯をつなぎ合わせる役割を担っています。
進行するとインプラントが外れてしまうこともありますが、多くの場合は早期であれば再度固定し直すことで対応可能です。
インプラントの痛みをできるだけ抑えるための対処法

インプラント手術後の痛みは完全に避けられるものではありませんが、正しい対応によって不快感を軽減し、回復を助けることができます。
ここでは、日常生活で実践しやすい主な対処法を紹介します。
処方された痛み止めを服用する
インプラント手術後は、鎮痛薬が処方されるのが一般的です。鎮痛剤は痛みが強まってから服用するよりも、違和感や軽い痛みを感じ始めた時点で指示通りに服用するほうが効果的とされているため、痛みが出そうだと感じたらすぐに服用するといいでしょう。
痛みが強いからといって自己判断で用量を増やしたり、服用間隔を短くしたりするのは副作用のリスクがあります。服薬に関しては、必ず指示を守りましょう。
飲酒・喫煙は控える
アルコールを摂取すると血流が促進され、腫れや出血が強まるおそれがあります。また、処方された薬との相互作用で思わぬ副作用が生じる可能性も否定できません。喫煙については、血管が収縮し傷の回復に影響を及ぼすことや、唾液の分泌が抑制されて口腔内が乾燥し感染につながるリスクも指摘されています。
そのため術後数日は、飲酒・喫煙を避けることが推奨されます。
手術後数日は入浴・激しい運動はしない
入浴や運動によって体温や血流が急激に高まると、傷口の腫れや痛みが増す可能性があります。手術当日は入浴を避けて、シャワー程度にとどめましょう。
また数日間は激しい運動やサウナを避け、できるだけ安静を意識して過ごしてください。無理をせず、回復の経過を見ながら生活リズムを整えていくことが大切です。
刺激物は控える
辛味や酸味の強い料理、熱すぎる飲み物は、手術部位を刺激して痛みを悪化させる要因になりかねません。
インプラント手術後しばらくは、香辛料の多い料理や熱いスープなどを控え、常温やぬるめの飲食物を中心にするように意識しましょう。
柔らかめの食事を心掛ける
硬い食品は強く噛む必要があるため、インプラント手術後は避けたほうがいいでしょう。患部に直接負担がかかり、痛みや出血を招くことがあります。
手術後しばらくはうどんやおかゆ、煮込み料理など、柔らかくて消化の良い食事を中心に取り入れるのがいいでしょう。
日々のケアを丁寧に行う
術後は傷口に配慮しながら、口の中を清潔に保つことが大切です。柔らかい毛の歯ブラシを使い、患部を避けてやさしく磨きましょう。
必要に応じて殺菌効果のあるうがい薬を使用すると、細菌の繁殖を抑える効果も期待できます。清掃が不十分だと感染のリスクが高まり、痛みや腫れが長引く原因となるため、毎日のケアを欠かさず続けることが重要です。
歯科医院での定期的なメンテナンスを欠かさない
日常的な歯みがきやフロスなどによるセルフケアだけでは、インプラント周囲の清掃には限界があります。
そのため、歯科医院での定期的なメンテナンスが重要です。歯科医師や歯科衛生士が専門的なクリーニングを行い、噛み合わせや部品の緩みを確認することで、将来的なトラブルを避けやすくなります。
一般的には3〜6か月ごとの受診が推奨されており、定期的なメンテナンスを続けることで、インプラントを良好に維持しやすくなるでしょう。また、周囲の歯ぐきや骨の健康も維持しやすくなるため、痛みやトラブルの予防につながることがあります。
鎮痛薬の服用、安静、飲酒や刺激物の制限など、日常生活での工夫によって術後の痛みは軽減できるケースもあります。さらに、日々の清掃と定期的なメンテナンスも大切です。
インプラント治療に関するよくある質問
インプラント治療を検討する際、多くの方が「手術は痛くないのか」「後からトラブルは起きないのか」といった疑問を抱きます。
ここでは、インプラントの痛みに関して寄せられる代表的な質問を取り上げ、わかりやすく解説します。不安を解消し、治療に関する理解を深める参考にしてください。
インプラントの痛みが出るタイミングを把握しておこう

インプラント治療の痛みは、手術直後や数年後など、さまざまなタイミングで現れる可能性がありますが、多くの場合は適切なケアや医師の指示を守ることで、不快感を軽減できるケースもあります。
もちろん、インプラント治療は口腔外科手術ですので、痛み以外にも腫れや出血といったリスクを伴います。
痛みが続く、違和感があるなど気になる点がある場合は自己判断せず、早めに歯科医院へ相談するようにしましょう。
記事監修:あずさ歯科クリニック麹町 院長 児島 梓 先生

2010年に岡山大学歯学部を卒業後、岡山大学予防歯科学講座に所属。その後、大阪の歯科クリニックで分院長を務めるなど臨床経験を積み、埼玉県・東京都内のクリニック勤務を経て、2023年4月に「あずさ歯科クリニック麹町」を開設。
豊富な臨床経験に加え、インビザラインや矯正歯科、インプラント治療、審美・補綴領域に至るまで幅広い研修・専門コースを修了。最新の知識と技術の習得に積極的に取り組み、精密かつ安心できる歯科治療を患者様に提供する。
単に症状を治すだけではなく、生活習慣や根本原因にアプローチし「将来にわたって口腔の健康と美しさを維持できること」を重視した診療姿勢は、多くの患者様から高い信頼を集めている。
経歴
経歴
- 2010年 岡山大学歯学部卒業
- 2011年 岡山大学予防歯科学講座
- 2013~2021年 大阪のクリニック勤務(分院長経験)
- 2021~2022年 埼玉県・東京都内のクリニック勤務
- 2023年4月 あずさ歯科クリニック麹町開設
資格・所属学会
資格・所属学会
- インビザラインコース受講
- 宮島矯正コース受講
- ストローマンインプラントベーシックコース受講
- EXDI6ヶ月コース受講
- SJCDレギュラーコース受講


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